大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)4259号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕次に被告渡辺為英と前記赤松登代子とは夫婦であつたが昭和四一年六月三日協議離婚したことは当事者間に争がなく、被告渡辺為英が被告赤松智津子同赤松薫に昭和四一年四月三〇日別紙目録記載の物件を贈与し、原告主張のように所有権移転登記をしたこと、右贈与契約は被告赤松両名の法定代理人である親権者である被告渡辺為英同赤松登代子がしたものであること、当時右物件は被告渡辺為英の唯一の財産であつたことは当事者間に争がない。
ところで被告渡辺為英は右贈与当時前項に認定した通り原告に対して元金一〇〇万の債務を負担していたのであるから、同被告が唯一の財産である不動産を贈与することは債権者を害する行為であり、同被告において当時債権者を害することを知つていたものと言わねばならない。被告渡辺為英本人尋問の結果によると、右贈与は当時夫婦であつた被告渡辺為英と赤松登代子との間で協議離婚の話合いが進み離婚後子である被告赤松智津子と同薫との養育費に当てるためにしたものであることが認められはするが、それだからと言つて右贈与が債権者を害する行為となることには変りがない。
被告らは右贈与当時被告赤松智津子同薫の親権者赤松登代子は債権者を害することを知らなかつたと主張するが、右贈与当時被告赤松智津子同薫の親権者は被告渡辺為英と赤松登代子の二人であつたことが前認定の事実から明らかであつて、しかも右贈与は親権者被告渡辺為英と未成年者被告赤松智津子同薫と利益相反の行為でないから、被告渡辺為英は贈与者として、また受贈者である被告赤松智津子同薫の法定代理人として赤松登代子と共同して右受贈者を代理してしたものと言わねばならない。しかして被告渡辺為英自身はすでに認定した通り右贈与は債権者を害することを知つていたのであるばかりか、被告赤松智津子同薫の法定代理人赤松登代子本人尋問の結果によると、当時右赤松登代子は被告渡辺為英が資金に困り訴外小林某からひそかに赤松登代子が所有し居住家屋の敷地である土地を担保に入れ二〇〇万円を借受け、その返済に困つている窮状を知つていたこと、贈与の目的物件が被告渡辺為英の唯一の財産であることを百も承知していたこと、が認められるから、被告らの抗弁は認容することができない。
そうすると、被告渡辺為英と被告赤松智津子同薫との別紙目録記載の物については正当であり、右贈与の取消を求める原告の請求は認容すべきである。また右贈与が取消された以上右贈与を原因としてなされた被告赤松智津子同薫の別紙目録記載の物件についての取得登記は抹消せらるべきであつて、これを求める原告の請求も正当であるから認容すべきである。(喜多 勝)